【Vol.20】2004年2月号

「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

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Amenity & Sound アメニティ & サウンド

Monthly マンスリー
20043月号 CONTENTS

1 .技術・開発コラム

デザインとインターフェース

2 .音と音響の四方山

次世代 PC Audio

今回はPCに関連した話題が重なっていますが……

PCMイメージ

編集後記   配信サービスと停止      2004年2月27日発行

1. 技術・開発コラム デザインとインターフェース

このコーナーは、 ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で お届けできればと考えています。

PCのインターフェースについてあるWEBマガジン系サイトの記事で 「機能はそれほど重要ではない。 重要なのはデザインとインタフェースであって、少なくとも性能ではない。 ……」 というジャーナリストの方の発言が掲載されているのを見かけました (リンクしていませんが、 有名どころですので 「ユーザーインタフェース」 で検索すると簡単に見つかると思います)

デザインが画一的

これは、PCのユーザーインターフェースが同じOS( Windows )を搭載して同じCPU、類似した構成のパソコンばかりで、 一般の人がj興味を持てなくなっているという主張している方が、 PCがデジタル家電化すると家電もインターフェースが一様になって ユーザーが興味を持たなくなると述べられている中の一節です。

ここでいうデジタル家電というのは、 HDDレコーダや薄型ディスプレイ、 デジタルカメラなどをイメージされていて、 PCがAV家電になると、 OSや規格化によって一様のデザインや操作方法になって、 製品ごとの差がないため、うまくない、 家電メーカががんばってパソコンのようにしてはいけない というような主旨です。

デザインやユーザーインターフェースが重要ではないとは思いませんが、 工業製品はユーザーが望む「 機能や性能を満たしていること 」が重要で、次にそれを操作したり利用する上での「 デザインが良い」、 「使いやすい」 というプライオリティではないかと思います。

現在のPCの仕様の詳細に ユーザーが興味が薄くなっていることには 同意できるかもしれませんが、 理由はユーザーインターフェースの一様性でも、 デザイン(GUI) でもないでしょう( 新鮮さがないかもしれませんが)。

パソコンの利用レベルでの仕様が 複雑でボリュームがあり、 全てを詳細には把握できなくなっていることと、 ある程度の希望を満たす製品だろうと期待( 推測 )しているからその詳細に興味が薄れているだけではないかと思います。

家電や携帯のデザイン

家電や携帯電話のデザインは、 製品、メーカーごとにデザインがユニークになっていて PCは一様であるという認識で語られているのですが、 家電などをはじめとするコンシューマ製品の方がパソコンのGUIの差より、 よほど画一的なインターフェースに統一されています( 工業規格や業界規格を決めて 統一の努力がなされていますから)。

デザイン携帯に人気があることなどが論拠なのかもしれませんが、 見かけだけで本質的なインターフェースは同じです。

なぜ、IIS(サーバー)まで GUIが統一されているのでしょう。 アプリケーションは独自の道を取ることも可能なのに ギリギリボタンやメニューを合わせて 機能で勝負しているのはなぜでしょう。

UIの独自工夫

以前に海外のソフトウェアでダイアログボックスの <YES><NO> が左右逆配置のものがありましたが、 気を抜くと良く間違えました。

これは悪趣味な工夫とも言えますが、 理由があって確信的に行われていたと思います( わざわざ手間を掛けてシステムと逆にしています )。勘弁してほしいですね。

 

パソコンのGUIの一様性

パソコンのGUIは 進化が緩やかで一様であるのは競争がないからだとも語られてもいます。 これも大きな認識違いだと感じます。 大手のパソコンメーカーは、 自分の意志で全く異なるデスクトップやインターフェースに変更することは 不可能ではありません( 窓旗シールがつかなくなるかもしれませんが )。

GUIがある程度一様であることは 多機能なパソコンを利用するために必要な妥協点でしょう。 インターフェースの変化がはげしくては ユーザーが使えなくなってしまうか付き合いきれなくなってしまいます。

メーカーは、 ユーザーインターフェースを頻繁に変更して 鮮度を保ちたいのを抑えているといったほうが良いのではないでしょうか。 非常に些細な外観変更でも、 クレームになってしまうほどユーザーが保守的でもあります。

パソコンがデジタル家電になる時、 今のインタフェースをそのままにするとは限りません。 メニューデザインと外観の統一性などは、 今はわけあってスキン変更を止めているだけですから、 次のLonghornあたりで派手にスキン変更や UI演出がなされるのではないでしょうか。

大体、パソコンはX-Boxにだって、 HDDレコーダーのふりをすることだってしていますから、 OSが同じだからといって ユーザーインターフェースやデザインが画一的であるとは限りません( ユーザーが望まなければ)。

機能や性能はそれほど重要ではない?

少なくとも今のパソコンの購買パターンは 機能と性能とコストが製品が選択される 主要な要因であると思いますが…… DVDに録画できるのか、 ディスプレイの画質が良いか、 処理速度が高いかなどの性能差とコストが最も大きな要因で、 デザインが良くでも高価だったり、 求める性能がなければ購入しないでしょう。

携帯で言ったら、 カメラが付いている付いていないが機能でメニューがインタフェース。 」とも言われていて、 機能は重要ではないといわれているのですが、 メニューデザインが悪くて「カメラ機能付き」のモデルと、 デザインが良い「カメラ無し」なら 恐らく多くの方が「カメラ付き」を選ぶような気がします。

機能や性能に大きな差があるものは、 比較の対象にならないことの法が多いのではないでしょうか。

機能性能コスト が僅差となった場合や( 例えば、カメラ機能はいらない人 )、同じ機能でも 高価なデザインの良い製品を選択することはあると思いますが、 置物ではないので道具として 求めている機能や性能は重要 ではないかと思います。

日本はデザインが良い物が売れる傾向にありますし、 自動車では、 日産が技術の過度の追求を止めて デザイン性などを見直した製品人気もあって 脅威的な好業績になっているので、 デザインの重要性を盲信的に考えられているのかもしれません。

製品開発でも デザインは最も重要な要素の1つではありますが、 工業製品の場合、 性能や機能を必要十分に満たしていることはもっと大切だと思います。 ユーザーインターフェースの良し悪し、 操作性や視認性などは、 機能や性能の一部ですからデザイン的にというより、 性能として重視することが重要かもしれません。

それでは、 次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

高速不動小数点

ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発 などをお手伝いや、 マルチプロセッサ搭載のDSPボードなどを開発しています。

▲CONTENS

2. 音と音響の四方山 次世代 PC Audio

音と音響の四方山 このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。

この所、 インテルやデルなど米国IT系企業のAV家電参入によって 映像系を中心に大きく展開を見せそうなコンシューマAV市場ですが、 昨年インテルが発表していた数々の規格とロードマップに 次世代の PC用Audio規格が含まれています。

AC'97から……

現在のパソコンは、AVパソコンなどと呼称されていても、 音声ボードやUSBオーディオなどを用いないスタンダードな形式は、 おおよそAC'97というPCのマイク、 ライン音声入力、ステレオ音声出力とミックス( +モデム )の方式のI./F部分を取り決めただけの規格によったものです。

AC'97は、 Windows 98以降のOSと共に各パソコンに搭載され、 スタンダードを固める役割を十分に果たしたものですが、 マルチチャンネル入出力を扱っていないため、 SACD[ (Super Audio CD)、 DISC DVD-Audio、 DVDのドルビーサラウンドや音楽製作などで 利用されるようなマルチチャンネルの入出力には サウンドボードや周辺インターフェースが必要になっています( SACDはPC用ドライブはないと記憶しています )。

マイクロソフト社の Windows Media Player 9 は、5.1ch のマルチチャンネルオーディオを再生することができますが、 マイクロソフト社のダウンロードページの案内にも オーディオに関しての一番初めの表題が「 あなたの PC は 5.1 オーディオの準備ができていますか? 」となっており、本体にオンボードで内蔵していることはまず無いため、 5.1 対応のサウンド カードが必要だと案内されています。

AC'97 はパソコンの音声とモデムの機能をチップセットに内蔵し、 アナログ部分のD/A変換などを別回路にして コストダウンの標準化を狙った規格で「 マルチメディア・オーディオ用 AC'97対応 」などとも銘打たれますが、 ハイエンドオーディオへの拡張までは もともと視野に入れられていない規格です。

マルチメディア家電としてのオーディオ部には レート、語長、チャンネル数と不足しているため、 何らかのハードウェアの拡張が必要となります。

SACD(Super Audio CD)

SACDは、 ソニーの高品位CD規格に相当する大容量でハイサンプリング、 5.1ch マルチチャンネル音声を記録できるメディアです。 ダイレクトストリーム方式というハイサンプリングレートの PWMでD/A変換されます。

ハイブリッド版というCD としても再生可能なトラックを併せ持つ両互換メディアが 昨年から登場しています。

DVD-Audio

DVD-Auidoは、 高機能オーディオ専用に定められたDVD-Videoとは 別の規格となっているフォーマットです( ビデオ規格との互換部を持ち、 映像を納めることも可能になっています)。

DVD-Audioには、 192kHz/24bit 2Chからも96KHz 5.1ch までの複数のフォーマットあります。

パソコンで再生

DVD-Audioは互換部もあり、 ドライブの物理的な記録方式が異なるというものではないため 対応したプレーヤーがあればパソコンでも再生できます。 また、普通に再生するとビデオ互換部分が再生されます( 記録されていれば)。

SACD は記録方式が全く異なるため、 PCのドライブでは読み取ることができません。 コピー問題もあるためSACDを読み取るドライブは 将来に渡ってライセンスされないのかもしれません。

DVDSACD はコピー保護機構を定めたメディアになっていますが、 今回話題にしているAzalia でもコピー問題でのコンテンツホルダーとの折衝が 重要な問題となるだろうことが ニュースメディアなどでも予想されています。

High Definition Audio (HD Audio)規格 Azalia

インテルの新規格コードネーム Azaliaは、 デジタル家電と同等の音声能力を持たせるために必要な DVD-AudioSACDドルビーサラウンド などのマルチメディア音声に対応できないことを打開するための HD(High Definition)-Audio などとも呼ばれている新しいパソコン用のオーディオ規格です (対応可能なハード仕様にするということで、 実装されるかは未定だそうですが)

PCMイメージチップセットで高レベルオーディオに対応し、 AC'97 と同様にコストダウンを図ったり、 高機能化のための多チャンネル拡張などを可能にするのが目的の規格です。 2004年後半に市場に登場するロードマップとされています。

  DMAエンジンの規定
  フレキシブルなデジタルI/Fストリーム
  192kHz/32bit デジタルオーディオ
  マルチチャンネル対応

まだ、最終仕様として詳細は発表されていないようですが、 ノートPCなど向けの小型-低消費電力を担う部分と、 デスクトップやホームPCでの 高品位・多チャンネルの両方を満足するために 統合部分やオンボードでの拡張部分まで取り決められた 音声関係を標準として幅広く対応させることが 十分考えられているようです。

32bit?

なぜにまた32bitかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、 デジタルのI/Fでチップセットの外部にストリーム入出力が採られますから、 接続される拡張ハードウェアとのデータのI/Fを考えたとき、 デジタルでのマージンと精度が十分にあり、 PCで扱いやすい語長が良いということだと思います。 多分、32bitのデータを再生できるようにという意図ではないと思います( わかりませんが)。

PCMイメージよく知られていることに デジタルデータをデジタルのままレベルを下げた演算を行って、 後にレベルをブーストすると、 精度が語長に満たないということが起こります。

そのため音声系では 最低24bit、32bitの浮動小数点演算も珍しくありません。

出力に必要な24bit語長でI/Fをすると、 拡張葉ハードウェアを追加したとき、 小レベルに下がった状態でオーディオ信号の精度に欠けることは 避けられないため32bit語長と取り決められているのではないかと思います。

それでも、残るのがヘッドマージン部分です。 できれば、 デジタルでもストリームやI/F中はヘッドマージンを持って 統一レベル規定されていると、 一時的なオーバーレベルでクリップすることがなくなるため、 最大値に正規化しないでヘッドマージンが持たせてあると良いと思うのですが、 今の所、詳細まではわかりません( 多分最大値に正規化されているのでしょうね )。

4bit/12dBなどをヘッドマージンに規定されていると (4bitの微小信号部も確保できますし) レベルダイアグラムをシフトさせなくても、 ある程までミックス等のクリップ問題を回避しながら 高品位にマスターコンプを掛けた音声にすることも 可能になるので、かなりの処理に耐えられると思いますが……

2004年後半

以前のUSBやIEEE1394ドライバなどのように、 OS向けの対応オーディオ・ドライバが懸念されるところですが、 AC'97の時のような非互換問題を生じさせないためにも インテル製のドライバでの安定動作を図るようです。 このAzaliaに対応したハードの内どれほどが マルチチャンネル化されたAV系デザインのPCとして登場するのかは 予測できませんが、 拡張ボードと合わせてAVアンプのように端子を多数持った AVホームサーバーのようなPCもスタンダード規格に準拠した形として 登場可能になります。

PCI Express、 シリアルATAとAzaliaなど 周辺I/Fを一新したものが デル のいっているパソコンのデザインを一変させるPCだと思いますが…… オーディオ周辺はスムーズに移行されますでしょうか。

それでは、次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発音響設計音響測定などをお手伝いしています。
▲CONTENS

  編集後記

 あまり、批判めいたことを書くのは何かとは思うのですが……

ユーザーインターフェースの記事は、 通信関連のジャーナリストの方がセミナーでお話になっているようです。 パソコンとデジタル家電、携帯電話に関するセミナーのようですが…… 受講者の方々はどのように受け止められているのでしょう。

同じ記事中に比喩として、「 すべての車でエンジンと運転席が同じだったら、 誰がポルシェを買うの? 」という一節もあるのですが、 エンジンと運転席が同じでもドライバビリティは同じになりません。 説のとおりデザインが重要なら、 運転席が同じでも外観デザインで買うのではないでしょうか。

デジタル家電なのような製品で、 ユーザーインタフェースの差別化がある程度重要になることは 間違いないとは思いますが、 そのデザインが性能や機能よりも絶対的である というのもどうかと思います。 機能や性能が必要十分に満たされていて差別化のためだけに 性能差が生じているほど成熟すれば、 性能は問題にされなくなると思いますが、 当面は、機能的にもなすべきことは沢山あるような気がします。

世の中には天動説を信じる人もいるので、 UIデザインが絶対だというジャーナリストがいても良いのですが、 大手サイトやセミナーで語る内容かな? という気がします。 この記事がまた、 「ユーザーインターフェース」のキーワードで検索すると、 2/26現在Google(Yahoo!を含む)で 1位の検索結果に現れるのも…… どうかと…… ユーザーインターフェースといえばこれですか…… そうですか

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿 など歓迎いたしますので、なんでもお気軽にお寄せください。

※ご感想をお寄せいただきありがとうございます。 全ての方に返信できなくて申し訳ありません。 この場で御礼申し上げます。

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