【Vol.12】2003年6月号

「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

Vol.12

Amenity & Sound  アメニティ & サウンド

Manthly マンスリー
20036月号 CONTENTS

1 .技術・開発コラム

音を処理する【前編】

2 .音と音響の四方山

身近な音響測定の話

 

コラム 今月は音に関係して話題2題です。 1編は連続ものになってしまいました。すみません。

編集後記   配信サービスと停止      2003年6月26日発行
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技術・開発コラム  音を処理する【前編】

技術・開発コラム このコーナーは、 ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で お届けできればと考えています。

デジタルの音響信号をCPUやDSPで処理する場合、 そのソフトウェアは、 音質や場合によっては、 音のキャラクタ (芯の太い音、広がり感のある音など) にも影響する場合があります。

プロセッサ、DSP

エフェクターなどに代表されるような信号処理に DSPDigital Siginal Processor などで処理されることが多いということはご存知かと思います。

一般に呼称されている DSP は、ハードワイヤリング (ハードウェア回路で専用処理を行なうようにされたもの) のプロセッサと ソフトウェアで動作させる汎用的なプロセッサ の2種類のプロセッサが用いられています。

ハードワイヤリングのプロセッサは、 最適な設計がなされた場合、処理内容にはよりますが、 ソフトウェア記録したり実行するための回路が不要ですから、 同一規模のチップでより高速、高度な処理ができます。

しかし、 マルチ・エフェクタのように 多くのバリエーションのある処理は、 その分だけ回路が必要となるため、 あまり適していません。

ソフトウェアのプログラムを実行して動作するDSPの場合には、 ソフトウェアを入れ替えることで多くのバリエーションの 信号処理を同一のハードウェアで実現することができますから、 マルチエフェクタのような 処理バリエーションが多いタイプの機器には適しています。

ソフトウェアで動作している場合でも、 機器のハードウェア構成を最適にするために カスタムチップで実現され、特別な演算回路や、 機器専用回路を内蔵するプロセッサである場合も多々あります。

速度と分解能

デジタルの音響信号は、CDの場合で 44.1KHz (約22usに1データ)とデータの処理速度も高速です (ビデオ信号方が高速な場合は多いですが)

信号処理プロセッサは、 この1周期の間に全ての計算を終える演算速度が必要です。

実際には、 複数のチャンネル数分を演算しなければならないため、 かなりの演算速度が必要になります。

この速度は、 処理するチャンネル数とサンプリング周波数で決まりますが、 CD44.1KHz より、DVD-Audio の96KHzは倍以上のサンプリング周波数ですから、 半分の時間以内に演算を終えないと 同じ信号処理が実現できなくなります。

また、人の聴覚は歪やノイズに敏感で、 高品位に処理する必要があります。

最近のAVアンプが 多語長の高性能プロセッサを搭載していることが多いのは、 スペック主義ではなく メーカーが主張しているように音質のためです。

単純な例では、 非常にレベルを下げて語長が失われたデータを レベルアップするような処理になる場合、 失われるデータによって分解能が低下します。

実データより高い演算語長が必要となる 最も判りやすい端的な例は このようなレベルによる語長損失ですが、 演算の誤差が蓄積することによる精度低下や、 そもそも演算上精度が必要となる イコライザなどの演算もあります。

極端なレベル変化を考えなくても、 リバーブ(残響)などでは、 反射を繰り返して 徐々にエネルギー損失する処理を行ないます。 この場合には、 反射のロス分レベル低下したものが 多数加算された音になります。

リバーブ音の品質を向上させるためには、 減衰した音を記憶して繰り返し演算している部分で、 より分解能が高い演算をする必要があることは 簡単にイメージできます。

極端な例でいえば、サイン波も、 ノコギリ波もレベルを限界まで下げると、 デジタルでは1ビット解像度の 方形波データになってしまいますが、 演算精度が高い場合には、 波形を保ったまま加算演算できますから その誤差が累積した出力結果は当然異なります。

この話題は次回も続きをお届けします。 HTMLなのにテキストの比重が多くで申し訳ありません。

それでは、 次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発 などをお手伝いしています。

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音と音響の四方山  身近な音響測定の話

音と音響の四方山 このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので、 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。

テキスト版のアメニティ&サウンドでは、 昨年、音響測定のコラム連載をしていました。 今回は音響測定の話題にしてみたいと思います。

音響測定

音響測定と一言で言った場合には、 一般には、可聴帯域の測定を連想しますが、 超音波なども含めると、音響測定、 計測技術の応用範囲は意外と広範囲に及びます。

騒音や、防音 (遮音)、スピーカなどの音響機器の特性測定、 工業機器の騒音レベル測定、音響探査のような測定や、 医療機器などでの超音波測定、そして、 ホールや劇場などの放送サービスの特性測定まで、 幅広く利用されている音響技術で測定が行われます。

ARIの音響測定業務は、 最後に挙げました放送サービスや拡声などでの 音響特性を測定する分野です。

ハンマーイメージ 新幹線トンネルのコンクリート剥離事故後に、 ニュースなどで多く見かけたハンマーによる打撃検診なども 一種の音響的な測定の仲間かも知れません (聞き取りだけで測定していないので 測定とは呼べませんが)

このコンクリート劣化の測定は、 超音波を利用して測定検診する機器が存在します。

音響測定とか診断などと呼ぶと堅くて難しそうに見えます。 色々な評価方法や測定方法、基準値などが定められていると、 非常に高度な感じもしますが、実際は、 色々な観点で音量などを測っているだけです。

周波数特性を測定したり、評価式で測定値を評価したり、 基準信号を流して測定するなど色々な手法で、 音響的な特性が測定されますが、音響測定は、 本質的に音量を計測しています。

特定の条件や、 観点でどれくらいの音量となっているかを測定していることが、 全てといっても過言ではありません。 周波数特性も特定の周波数帯域の音量を測定しているだけですし、 RT60などの残響にしても、残響時間を測定する基準は、 -60dbダウンする音量変化を測定し、 その時間を評価していますから、本質的には、 音量、音の大きさを測定していることになります。

ホームシアターの自動計測機能

6/19日のテキスト版のアメニティ&サウンドでもご紹介したのですが、 最近発表されたAVアンプでスピーカをマイクに利用して手を叩いた音を 各スピーカで位置等を測定し、マルチチャンネルの スピーカ出力調整を自動で行なうという製品があります。

以前から、ホームシアターシステムやAVアンプには、 スピーカとリスニング位置との距離を入力して音量や ディレイを調整する機能がついていますが、 スピーカをマイクの代わりに使って測定と自動調節するのは、 なかなか面白いと思いました。

これも音響測定の1つですね。

リアサラウンドとメインスピーカとの間を 音がパンニング移動していたり 擬似的に上方に定位させるために 全チャンネルを利用してミックス調整されているソースの場合、 各スピーカのバランス、 音量などが調整されていないとうまく音場再生されないので、 ホームシアターでの音響調整は重要です。

調整するためには、測定が必要になりますが、 マイクやなどが必要になりますから、 スピーカをマイクの代わりに利用する方法を採用されているのは 家庭向けとしては適した方法だと思います。

どのくらいうまくできるのか興味がありますが、 レビュー記事などは、まだ、 無いようですので今の所わかりません。

測定した音は、 CPUに入力される説明図ブロック図になっていましたので、 手を叩いたアタック音のタイミングと ある程度の範囲のピーク音のみで調整されるのだと思いますが、 詳細は記載されていませんでした。 説明では、音量とディレイを調節するそうです。

業務用放送などのアクティブな音量調節などでは スピーカをマイクに利用して動的に放送の音量を調節するという アイデアは以前から存在していますし、 実際に採用されている施設もあるかもしれませんが、 民生機器では、今までそのような機能は必要なかったので、 7月に発売されるAVアンプが始めてではないでしょうか。

このAVアンプのような方式が一般化すると 最も身近なところで働いている 音響測定器ということになりそうです (自動車の超音波測定の方が身近かも知れませんが)。

文中では、 音響測定業務について触れましたが、 携帯電話の開発用の音響測定システムMTA-01Wという製品を開発、 販売しています。 このシステムは多くの携帯電話メーカー様に ご採用いただいています(ありがとうございます)。

それでは次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、 音響設計 音響測定、 音響調整など 音響関連サービス の業務や、 デジタル機器の開発 プロ用音響機器 の販売を行なっています。
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■□ 編集後記 □■

あるニュースサイトのマーケティング記事に、 HDDレコーダーの将来市場予測の記事が掲載されていました (すみません。 リンク不可なのでリンクでご紹介できません)

その中に 「HDDの場合は、ビデオより自分で部品交換も可能なので良い」 という分析があったのですが、 HDDはパーツで考えた時、製品ライフサイクルが激しいので、 製造メーカー以外から修理のための交換可能なHDDを入手するのは 困難ではないかという気がします。

パソコンであれば、 代替ドライブでも利用できると思いますが、 HDDレコーダーは、 特定の識別ができないと利用できない可能性が高いですし、 ユーザーが新たなドライブを認識させる手段はありませんので、 自分で交換するには、 修理パーツを取り寄せることができる サービスセンターから修理パーツを 取り寄せることになるのではないでしょうか。

そうだとすると、 修理パーツを取り寄せ可能なメーカーに限定される上、 メーカーのサービスセンターに パーツ番号などで依頼することになるので、 修理に出すのとどちらが手軽かは判らない (むしろパーツ取り寄せの方が敷居は高いと思いますが) ですし、 ビデオヘッドなどの消耗品交換より技術的にイージーであっても、 あまりアドバンテージにはならないような気がしますが...

マーケティング的には... アドバンテージがあるという分析になるのでしょうか? 家電量販店の店員の方にも意見を伺ってみたいところです。

それでは、 次回、2003年7月号もよろしくお願いいたします。

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿など歓迎いたしますので、 なんでもお気軽にお寄せください。

■□ 配信と配信中止 □■

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